冤罪マップ

Winny事件

金子 勇(かねこ いさむ)

不当な刑事手続無罪確定

ファイル共有ソフト「Winny」を開発し、改良を重ねながらウェブサイト上で不特定多数に公開・提供していた金子勇氏が、正犯者2名がこれを利用してゲームソフト等を自動公衆送信し著作権者の公衆送信権を侵害したとして、著作権法違反幇助の罪で2004年5月に逮捕・起訴された。

2006年12月、京都地裁は幇助犯の成立を認め、罰金150万円の有罪判決を言い渡した。この判決に対し、検察官は量刑不当を理由に、被告人は訴訟手続の法令違反・事実誤認・法令適用の誤りを理由に、双方が控訴した。2009年10月8日、大阪高裁は、インターネット上のソフト提供による幇助犯はこれまでにない新しい類型であり刑事罰を科すには罪刑法定主義の見地からも慎重な検討を要するとして、幇助犯の成立を否定し逆転無罪を言い渡した。

検察官が上告したのに対し、2011年12月19日、最高裁判所第三小法廷は上告を棄却し、無罪が確定した。決定は、原判決には幇助犯の成立要件に関する法令の解釈を誤った違法があるとしつつ、幇助犯の成立を否定した結論自体は正当であるとした。理由として、被告人が現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識・認容しながらWinnyを公開・提供したものでないことは明らかであり、また公開・提供にあたって常時利用者に対し著作権侵害に利用しないよう警告を発していたことなどから、例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識・認容していたとまで認めることは困難であり、幇助犯の故意を欠くとした。

この決定には、大谷剛彦裁判官(裁判長)の反対意見が付されている。反対意見は、多数意見と結論を異にし、被告人には公衆送信権侵害の罪の幇助犯が成立すると考えるとしたうえで、原判決の破棄は免れないとした。Winnyは通信の秘密を保持しつつ効率的に情報交換ができる技術的有用性を持つ一方、その効率性と匿名性ゆえに著作権侵害に利用されやすい特徴があり、社会に広く無限定に技術を提供する以上、開発者にはこの面への相応の配慮が望まれるという立場である。

本決定は、それ自体は適法にも違法にも使える価値中立的な技術の提供者に、どこまでの認識があれば幇助犯の故意を認められるかを最高裁として初めて示したものとして、その後の同種事案の判断枠組みとなっている。金子氏は2013年7月、急性心筋梗塞により42歳で死去した。

逮捕年
2004
解決年
2011
期間
7年
確定判決
一審:罰金150万円の有罪(2006年12月、京都地裁)→ 控訴審:逆転無罪(2009年10月8日、大阪高裁)→ 上告審:検察官の上告を棄却し無罪確定(2011年12月19日、最高裁第三小法廷決定。裁判官1名の反対意見あり)
都道府県
京都府
地域
近畿
捜査機関
京都府警
時代
現代
刑事手続き進行度
捜査
逮捕
起訴
一審
控訴審
✓
上告審
確定
服役
再審
逮捕起訴一審無罪控訴審有罪→ 最高裁逆転無罪
通過有罪等無罪等進行中

ファイル共有ソフト「Winny」を開発し、改良を重ねながらウェブサイト上で不特定多数に公開・提供していた金子勇氏が、正犯者2名がこれを利用してゲームソフト等を自動公衆送信し著作権者の公衆送信権を侵害したとして、著作権法違反幇助の罪で2004年5月に逮捕・起訴された。 2006年12月、京都地裁は幇助犯の成立を認め、罰金150万円の有罪判決を言い渡した。この判決に対し、検察官は量刑不当を理由に、被告人は訴訟手続の法令違反・事実誤認・法令適用の誤りを理由に、双方が控訴した。2009年10月8日、大阪高裁は、インターネット上のソフト提供による幇助犯はこれまでにない新しい類型であり刑事罰を科すには罪刑法定主義の見地からも慎重な検討を要するとして、幇助犯の成立を否定し逆転無罪を言い渡した。 検察官が上告したのに対し、2011年12月19日、最高裁判所第三小法廷は上告を棄却し、無罪が確定した。決定は、原判決には幇助犯の成立要件に関する法令の解釈を誤った違法があるとしつつ、幇助犯の成立を否定した結論自体は正当であるとした。理由として、被告人が現に行われようとしている具体的な著作権侵害を認識・認容しながらWinnyを公開・提供したものでないことは明らかであり、また公開・提供にあたって常時利用者に対し著作権侵害に利用しないよう警告を発していたことなどから、例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識・認容していたとまで認めることは困難であり、幇助犯の故意を欠くとした。 この決定には、大谷剛彦裁判官(裁判長)の反対意見が付されている。反対意見は、多数意見と結論を異にし、被告人には公衆送信権侵害の罪の幇助犯が成立すると考えるとしたうえで、原判決の破棄は免れないとした。Winnyは通信の秘密を保持しつつ効率的に情報交換ができる技術的有用性を持つ一方、その効率性と匿名性ゆえに著作権侵害に利用されやすい特徴があり、社会に広く無限定に技術を提供する以上、開発者にはこの面への相応の配慮が望まれるという立場である。 本決定は、それ自体は適法にも違法にも使える価値中立的な技術の提供者に、どこまでの認識があれば幇助犯の故意を認められるかを最高裁として初めて示したものとして、その後の同種事案の判断枠組みとなっている。金子氏は2013年7月、急性心筋梗塞により42歳で死去した。

事件発生
2003年
被告人
金子 勇(かねこ いさむ)
判決
一審:罰金150万円の有罪(2006年12月、京都地裁)→ 控訴審:逆転無罪(2009年10月8日、大阪高裁)→ 上告審:検察官の上告を棄却し無罪確定(2011年12月19日、最高裁第三小法廷決定。裁判官1名の反対意見あり)
現在のステータス
無罪確定
冤罪の原因
法令解釈の問題、IT技術への理解不足

タイムライン

事件不利有利手続事後
2003.11立件端緒

Winny利用者による著作権侵害が問題化し、開発者責任の追及へと捜査が進んだ

2004.05金子勇 逮捕

京都府警がWinny開発者を著作権法違反幇助で逮捕

ソフトウェア開発者の逮捕として大きな衝撃を与えた
2006.12一審 京都地裁が有罪(罰金150万円)

京都地方裁判所は、被告人がWinnyの現実の利用状況等を認識しながら公開したとして著作権法違反罪の幇助犯の成立を認め、罰金150万円に処した。

2009.10控訴審 大阪高裁が逆転無罪

10月8日、大阪高等裁判所は、インターネット上のソフト提供による幇助犯はこれまでにない新しい類型であり、刑事罰を科すには罪刑法定主義の見地からも慎重な検討を要するとして、幇助犯の成立を否定し逆転無罪を言い渡した(平成19年(う)第461号)。

2011.12.19最高裁が検察官の上告を棄却、無罪確定

最高裁判所第三小法廷は、原判決には幇助犯の成立要件に関する法令の解釈を誤った違法があるとしつつ、幇助犯の成立を否定した結論は正当であるとして検察官の上告を棄却した(平成21年(あ)第1900号、刑集65巻9号1380頁)。被告人には幇助犯の故意が欠けるとした。裁判長の大谷剛彦裁判官が、幇助犯が成立するとの反対意見を付した。

裁判長:大谷剛彦(反対意見)/岡部喜代子・那須弘平・寺田逸郎・田原睦夫
2013.07金子勇 死去

2013年7月6日、急性心筋梗塞のため43歳で死去

刑事手続きの負担が健康に影響した可能性が指摘されている

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